勤務医の中には、医業収入だけでなく、副業による収入や不動産所得などにより、高所得になる医師も多くいらっしゃいます。
高額な税金に悩み、少しでも手元に残るお金を増やしたいと考えていませんか。
・勤務医が会社を設立すると本当に節税できるのか
・具体的に、どのような会社を設立すればいいのか
本記事では、医師(勤務医)の方に向けて、法人設立することで節税できる理由や法人化のメリット・デメリットを解説します。
法人化による節税方法を知り、手元に残るキャッシュを増やしていきましょう。
医師(勤務医)が法人設立で節税できる理由
この章では、勤務医が法人を設立することに問題はないのか、また法人設立が節税につながる仕組みについて解説します。
勤務医でも法人設立はできるのか
まず気になるのが、「そもそも勤務医は法人を設立できるのか」という点です。
病院やクリニックに勤務する医師であっても、就業規則で禁止されていない限り、勤務医が法人を設立すること自体に法律上の制限はありません。
医師(勤務医)の法人設立で税負担が下がる仕組み
一般的に、専門職である医師は高所得の傾向にあります。
さらに本業の医業のほか、副業や個人の不動産・投資による所得がある場合、高額な税金の支払いに頭を抱えている方も少なくないでしょう。
そこで、医師(勤務医)が法人設立することによって、医業以外の副業・資産・投資による収入を会社へ分散させるのが可能になるのです。
すべてを医師個人の収入とした場合、所得に対し高い税率の所得税がかかってしまいます。
しかし、医業以外の収入を個人ではなく法人で受け取るようにすると、法人税が適用されます。法人税の税率は所得税よりも低く抑えられているため、支払う税金を減らし節税につながるというわけです。
具体的な税率の違いについては、医師(勤務医)が法人設立するメリットで後ほど詳しく解説しています。
医師(勤務医)が法人設立する際の事業内容
前章で解説した仕組みを踏まえ、ここでは医師が実際に設立できる代表的な4つの事業を説明します。
資産管理会社の設立
資産管理会社の設立は、医師個人の資産や副業収入を管理するのが目的です。「プライベートカンパニー」とも呼ばれます。
事業拡大や売上獲得を目指す会社ではなく、あくまで個人資産の管理・運用を法人という器に移すことで、節税につなげる点が特徴です。
不動産投資や株式投資による収入がある医師に向いています。
メディカルサービス法人の設立
メディカルサービス法人は「MS法人」とも言われています。
医療法人は医療法により業務範囲が限定されており、原則として営利活動を行えません。そこで、医療法人ではできない営利事業を担う受け皿として設立されるのが「MS法人」です。
株式会社や合同会社と同じ形態と考えると分かりやすいでしょう。
具体的には、保険請求業務や会計業務、医薬品・医療機器の仕入れや管理のほか、美容クリニックであれば化粧品の販売などが挙げられます。
自院や医療法人の運営に携わっている場合は、MS法人も検討材料となります。
講演会や執筆などを行う会社の設立
医師の中には、医療分野の原稿執筆や記事監修、講演会・セミナーへの登壇といった活動をしている方も多くいらっしゃいます。
会社を設立することで、副業的な活動から得られる報酬を法人の売上として計上できるようになるのです。
また、必要経費の範囲も広がります。たとえば、執筆や登壇にかかる書籍代や資料作成費、移動のための交通費などを経費として計上しやすくなります。結果として、税負担を抑えることにつながります。
医療コンサルティング会社の設立
医療コンサルティング会社は、病院やクリニックの開業サポート、経営分析・改善提案などを目的として設立する会社です。
豊富な臨床経験や医療現場の知見を活かし、これから開業を目指す医師や、経営に課題を抱えるクリニックへ向けてアドバイスを行います。
コンサルティング業務から得た報酬を法人の売上として計上することで、こちらも同様に節税につなげることができます。
医師(勤務医)が法人設立するメリット
ここからは、医師(勤務医)が法人を設立するメリットを3つ解説していきます。冒頭でお伝えした法人税による節税を含め、その他のメリットもあわせて押さえておきましょう。
法人税の適用による節税
会社を設立して法人税が適用されることにより、節税につながるのが大きなメリットです。
課税所得900万円の勤務医の方が、副業で100万円の所得を得た場合を例に、個人と法人の税率を比較してみましょう。
個人の場合、副業所得は給与所得と合算されるため、すでに給与所得だけで900万円ある方は、副業分の100万円に33%の税率がかかります。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」をもとに作成
一方、この100万円を法人(資本金1億円以下)の所得として受け取れば、税率は15%で済みます。
| 区分 | 適用関係(開始事業年度) | |||||||
| 平28.4.1以後 | 平30.4.1以後 | 平31.4.1以後 | 令4.4.1以後 | 令7.4.1以後 | ||||
| 普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% | 15% | 15% | 15% | 15% (17%(注1)) |
| 適用除外事業者 | 19% | 19% | 19% | |||||
| 上記以外の普通法人 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」をもとに作成
同じ100万円の所得でも、個人と法人では上記のように税率が大幅に違ってくるのです。
なぜなら、所得が増えるほど税率も上がる個人の所得税に対し、法人税は一定の所得までなら15%という低い税率に抑えられているためです。
このように、ご自身の給与水準によっては、法人化することで十分な節税効果が見込めます。
上記のほか、個人の場合は個人住民税・個人事業税・消費税、法人の場合は法人事業税・法人住民税(道府県民税・市町村民税)が別途かかります。
また、自由診療・物販などの課税売上高が年間1000万円を超える場合、インボイス登録をしている場合には、消費税もかかりますのでご注意ください。
(注1) 令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります。(引用:国税庁「No.5759 法人税の税率」)
経費算入の範囲拡大
法人化すると、会社の事業として経費計上できる範囲が拡大します。
代表的な経費の例は以下の通りです。
・出張の際の交通費や宿泊費、出張手当の支給も可能
・生命保険料(法人名義で契約した保険)
・交際費(取引先や関係者との会食など)
・福利厚生費
・車両関連費
個人事業でも経費にできる費用はありますが、法人ではその範囲がさらに広がります。経費が増えるほど所得額が圧縮され、結果として支払う税金も抑えられるでしょう。
退職金の準備と節税効果
法人を設立すると、役員退職金制度を自分で設計できます。
勤務医のままでは難しい退職金の準備が、法人化すれば金額や時期を自社で決められるため、計画的に行えるようになるでしょう。
また、退職金を支払う際には、適正な限度額までは損金算入できるため、法人の「経費」として認められます。結果として利益が抑えられ、法人税の負担軽減につながるのです。
医師(勤務医)が法人設立するデメリット
会社を設立した後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐためにも、医師(勤務医)が法人を設立する際に知っておくべき注意点をお伝えします。
設立費用
会社を設立するには、必ず初期費用がかかります。主な費用は以下の通りです。
・登録免許税
・定款認証手数料(株式会社のみ)
・定款の収入印紙代(電子定款の場合は不要)
また、印鑑作成や登記簿謄本の発行にかかる費用も必要です。
ご自身で手続きを行った場合、合計すると株式会社で約17万〜25万円、合同会社で約6万〜11万円が初期費用の目安となります。
ただし、会社組織や事業目的・設立後の運用方法なども大きく関係するため、税理士に相談・依頼することをおすすめします。一度設立すると変更に時間もコストもかかるため、事前の相談が大事であり、会社設立後に相談をされても、変更ができない場合もあるため要注意です。
専門家に依頼した場合は、上記初期費用も含めて、株式会社で30万〜50万円、合同会社で20万〜30万円程度を見込んでおけば問題ないでしょう。
一方、個人事業主として開業する場合は、基本的に手続きに費用はかかりません。開業届や青色申告承認申請書などを提出するのみで完了します。
しかし、法人の場合は設立にあたって必ず費用がかかるため、その点を理解した上で法人化を検討していくのが大切です。
運営コスト
会社を運営していくために、毎月のコストが発生します。
・税理士の顧問料
・税金や社会保険料の支払い
・事務所の家賃
法人の会計や税務業務は個人事業主よりも複雑です。そのため、専門家である税理士のサポートを受けながら正しい会社運営をしていきましょう。
勤務先への確認
勤務医にとって、会社設立は副業となります。そのため「勤務先が副業を許可しているか」の確認は必須です。
また、副業可能な職場であったとしても、相談せずに法人設立することで後に問題となる可能性もあります。
余計なトラブルを防ぐためにも、前もって勤務先への確認や相談をしておくことがポイントになるでしょう。
まとめ:医師(勤務医)が節税するなら、まずは法人設立の検討をしてみましょう
医師(勤務医)が法人を設立することにより、収入の分散が可能になります。
法人では、所得税よりも低い税率の法人税が適用されるため、税負担が抑えられ節税につながります。
法人の形態には、以下のような複数の選択肢があり、ご自身の収入源や活動内容に合わせて選ぶことが可能です。
・資産管理会社
・MS法人
・講演会・執筆活動などを行う会社
・医療コンサルティング会社
最適な形は状況により異なるため、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
当Progress会計事務所は、医療特化の税理士事務所です。医業特有の知識を持ち合わせた税理士が、勤務医の法人設立についてご相談を承ります。
高額な税金や将来のお金の不安があるという場合は、ぜひ一度ご相談ください。