医師が開業を決める理由とは?注意点や判断ポイントも解説

勤務医として経験を重ねるなかで、今後も病院勤務を続けるか、開業という道を選ぶかは、大きなターニングポイントの一つです。

周囲で開業する医師が増えると、「なぜ開業を選んだのだろう」「自分にも開業という選択肢があるのでは」と考える方もいるでしょう。

本記事では、医師が開業を決める主な理由に加え、開業前に知っておきたい負担や、判断する際のポイントを解説します。

収入や働き方だけでなく、経営や資金面も含めて整理し、ご自分にとって開業が適した選択かを考える際の参考にしてください。

医師が開業する主な理由

医師が開業を考える背景には、診療方針や働き方、収入、経営への関心など、さまざまな理由があります。

ここでは、医師が開業を考える代表的な4つの理由を紹介します。

理想の医療を実現したい

自分が理想とする医療を実現したいという思いは、開業を考える大きな理由の一つです。

勤務医の場合、診療方針や診療時間、使用する設備などは、勤務先の方針に沿う必要があります。

一方、開業すれば、医院の診療方針や診療科目、診療時間、患者との関わり方などに自分の考えを反映しやすくなります。

たとえば、「地域に根ざした診療をしたい」「特定の疾患や治療分野に力を入れたい」「一人ひとりの患者とじっくり向き合いたい」など、実現したい医療が明確になったことをきっかけに、開業を検討する場合もあるでしょう。

働き方を見直したい

現在の働き方を見直したいというのも、医師が開業を考える理由として挙げられます。

勤務先によっては、通常の診療時間に加えて、当直やオンコール対応、時間外勤務が発生することがあります。

医師の長時間労働が課題となってきた背景から、2024年4月には医師にも時間外・休日労働の上限規制が適用されました。(参考:医師の働き方改革)

開業後は、休診日や診療時間などを自分で決められるため、家族との時間や今後のライフステージを考えながら、働き方を設計しやすくなります。

ただし、開業すれば必ず勤務時間が短くなるわけではありません。診療時間外に経営やスタッフ管理などの業務が発生することもあります。

そのため「開業すれば自由になる」というよりも、「自分で働き方を決めやすくなる」と考えるほうが適切でしょう。

収入アップを目指したい

収入アップを目指して開業を検討する医師もいます。

勤務医は基本的に勤務先から給与を受け取りますが、開業後は医院の売上や利益が自身の収入に影響します。そのため、経営が順調に進めば、勤務医時代よりも収入が増える可能性があります。

ただし、医院の売上がそのまま院長の収入になるわけではありません。

診療による収入から、スタッフの人件費や家賃、医療機器の費用、光熱費などの経費を支払います。また、融資を受けて開業した場合には、借入金の返済も必要です。

収入アップは開業を考える理由の一つですが、実際の収入は医院の経営状況によって左右される点も理解しておきましょう。

医院経営に挑戦したい

医師として診療するだけでなく、自分で医院を経営してみたいという思いから開業する方もいます。

開業すれば、自分自身が経営者として医院づくりに携わることになります。

医院のコンセプトや、提供するサービス内容、スタッフの採用・教育体制などを自分の意思で決め、一つの医院をつくり上げていくことは、大きなやりがいにつながるでしょう。

また、自由診療メニューの展開や、ITツールを活用した業務効率化、地域の医療機関との連携強化など、経営者だからこそ実現できる取り組みも少なくありません。

医師が開業を検討する際に知っておきたい負担

開業によって得られることがある一方で、勤務医のときにはなかった経営上の負担も生じます。

こうした負担の大きさから、開業せず、勤務医として働き続けることを選ぶ医師も少なくありません。

ここでは、医師が開業を検討する際に知っておきたい主な負担を3つ紹介します。

診療と経営の両立が必要

開業後は、医師として患者を診療するだけでなく、経営者として医院を運営していきます。

勤務医時代には病院の事務部門などが担当していた経理や人事、契約、設備管理といった業務についても、院長として判断を求められる場面が増えます。

たとえば、新しいスタッフを採用するか、設備を入れ替えるか、毎月の支出をどこまで抑えるかなど、経営に関する判断も必要です。

ただし、すべての業務を院長一人で抱える必要はありません。税理士や社会保険労務士など、必要に応じて外部の専門家を活用する方法もあります。

診療に集中できる環境をつくるためにも、開業前から経営を支える体制を考えておくことが大切です。

開業資金の負担が大きい

医院を開業するには、まとまった資金が必要です。

初期費用として、物件の取得費や内装工事費、医療機器、備品などの設備資金がかかります。さらに、開業後の家賃や人件費などを支払うための運転資金も準備しておかなければなりません。

開業資金を自己資金だけでまかなうのは難しいため、金融機関からの融資を組み合わせて準備するのが一般的です。

▼開業資金の目安や資金調達の方法については、以下の記事でくわしく解説しています。
歯科医院の開業資金の目安とは? 資金調達から返済計画までを解説

融資ではいくら借りられるかだけではなく、開業後に無理なく返済できるかを確認することが重要です。医院の利益や生活費も含めて、余裕を持った資金計画を立てましょう。

集患やスタッフ管理を担う

開業後は、患者に来院してもらうための取り組みに加え、スタッフが働きやすい環境づくりも必要です。

開業予定地の患者ニーズや競合医院を調べたうえで、Webサイトなどを活用して医院の情報を発信し、認知度アップにつなげていくことも求められます。

また、スタッフを雇用すれば、給与やシフトの管理、教育、職場環境の整備なども行います。

開業後は診療だけでなく、集患のためのマーケティング視点や、スタッフと円滑に連携するためのコミュニケーションも求められるでしょう。

医院の開業を選ぶべきか判断するポイント

ここまで医師が開業する理由を紹介してきましたが、他の医師が開業した理由が、そのまま自分にも当てはまるとは限りません。

開業するかどうかは、診療への考え方や理想の働き方、資金面などを総合的に考えて判断することが大切です。

開業したい理由を整理する

まずは、「なぜ自分は開業したいのか」を具体的な言葉にしてみましょう。

・理想の診療を実現したい
・働き方を変えたい
・地域医療に貢献したい
・医院経営に挑戦したい
・収入を増やしたい 

上記は一例ですが、人によって理由は異なるはずです。開業する目的が明確になると、その後の医院づくりにも一貫性を持たせやすくなります。

たとえば、地域に根ざした診療をしたい場合は、開業する地域や診療時間を考える際の判断基準になります。特定の診療分野に力を入れたい場合は、必要な設備を検討する際にも役立つでしょう。

自分が開業によって何を実現したいのかを整理し、ご自身の軸をしっかり理解するのが重要です。

理想の働き方を具体化する

開業後にどのような働き方をしたいのかも具体的に考えてみましょう。

「自由に働きたい」というだけではなく、週に何日診療するのか、診療時間を何時までにするのか、休日をどうするのかなど、実際の生活までイメージします。

また、家族との時間や今後のキャリアについて考えるのも大切です。

開業すれば診療時間などを自分で設定しやすくなりますが、その分、経営やスタッフ管理などの仕事は増えます。そのため、開業後の1日や1週間の過ごし方を具体的に想定してみるとよいでしょう。

勤務医を続けた場合と開業した場合を比較し、「今の働き方の何を変えたいのか」「自分は何を優先したいのか」を整理することが、判断材料になります。

収支や資金計画を立てる

最後に、開業したいという思いだけではなく、数字の面から医院経営が成り立つかを確認しましょう。

まず、物件取得や内装工事、医療機器などに必要な設備資金と、開業後の人件費や家賃などに必要な運転資金を洗い出します。

そのうえで、自己資金でどこまで対応し、不足分をどのように調達するかを考えます。

さらに、想定する患者数や診療単価から売上を予測し、人件費や家賃、その他の経費、借入金の返済などを含めて収支を試算します。

具体的な数字に落とし込むことで、「開業したい」だけではなく、「事業として無理なく続けられるか」を判断しやすくなります。

まとめ:開業判断に迷ったら専門家への相談も活用しよう

医師が開業を選ぶ理由には、理想の医療の実現や働き方の見直し、収入アップ、医院経営への挑戦などがあります。

開業医は診療方針や働き方を自分で決めやすい一方で、資金管理や集患、スタッフ管理など経営も担うことになります。

まずは「なぜ開業したいのか」を整理し、理想の働き方や必要な資金、開業後の収支を具体的に検討しましょう。

そうすることで、「経営として成り立つか」という現実的な側面から、ご自身にとって開業が実現可能な選択か判断しやすくなります。

当Progress会計事務所では、医院開業に向けた資金計画や収支シミュレーションのご相談を承っております。開業に迷われている段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。

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